前回の続きです。
中国人が日本へ医療を受けに来る理由。
中国の医療背景。
中国の医療事情について
その2:中国の病院には等級が存在する。
日本とは違い、個人開業の私立病院はほとんどありません。
病院のほとんどが国営、公立です。
病院には等級が1〜3級と分かれていて、さらにその級の中でも、甲・乙・丙と分けられます。
この中で最もランクが高いのは3級甲。
2級以上の病院は24時間体制で運営されており、管理者レベル1名・緊急治療が診療科目1名の医師が常時待機しています。
↑某3級甲の病院内
ちなみにランク分けの基準としては
「規模」「機能」「役割」「管轄」
の違いによって分けられます。
一級病院: | ある特定範囲のコミュニティーに対し、予防や医療衛生、リハビリサービスを提供する小型病院や衛生院。 |
二級病院: | 複数のコミュニティーに対し、総合医療衛生サービスを提供し、ある程度の教育、研究任務を担当する地域病院。 |
三級病院: | 地域範囲を超えた複数の地域に対し、ハイレベルの専科医療サービスを提供し、高等教育と科学研究任務も担当する病院。 |
ちなみにこの等級制度は以前、外資系病院・民営・私立病院は対象ではなかったのですが、2012年から等級をつけるよう中国国家から指示が出されているようです。
等級の有効期間は5年間で、基本設備やベット数で等級は変動することもあります。
有効期間中に、2級から3級へ等級が上がることもあれば、
2級→1級、3級甲→3級乙へ格下げされることも頻繁にあります。
3級の下位病院と2級の上位病院には格段に差があり、病院の規模・設備・技術などが明らかに違うとのことです。
日本であればクリニックでも病院でも、あまり関係ないですよね。
風邪をひいたなら近くの医療機関へ行く。
重症ならば大病院へ直接行くとか、小さな病院から紹介状を書いてもらうとか。
もちろん得意な分野があったり、専門的な病院があったりはしますが、
基本的に、日本の病院にはある一定の水準があり、
”どこの病院でも安心して受診できる”というのが無意識にあります。
(もちろんセカンドオピニオンが必要なほどの難しい病気は別ですが)
しかし、中国ではそうではありません。
病院によって明らかに技術や設備のレベルが違うとされているのです。
もし同じ治療を受けるなら、一番技術があり、設備の整ったところで安心して受けたい。
そう考えてしまうのは人間と当然の心理です。
そしてその結果…
3級甲の大病院に患者が集まってしまうのです。
ただでさえも急速に増えた人口に病院の数や医療従事者が追いついていないのに、皆が皆、大病院へ向かうわけです。
中国では
骨折でも大病院!
風邪でも大病院!
調子が悪くても大病院!
薬をもらうにも大病院!
そしてこんなことになる。
/(^o^)\
以前、私も中国の方に日本の病院をご紹介していましたが、
「日本語名はクリニックや診療所であったとしても、中国語に翻訳する時は病院と表記したほうが良い」
と中国の方に言われたことがあります。
その理由がこの階級制度だったのです。
クリニックや診療所と聞くと、中国の低い階級の病院を思い描いてしまうからだそうです。
日本の病院には階級がなく、クリニックでも診療所でも大丈夫だと説明しても
やはり中国人にとっては
「病院=設備も医療従事者も揃っていて、政府に認められたレベルの高いところ」
「診療所やクリニック=設備も医療従事者も不足していて、政府に低レベル判定されたところ」
というイメージがどうしてもあるようです。
最近では中国政府が
「軽度な症状であれば、小さな病院でも大丈夫なのでそちらへ行くように」
という指示を出しているほどです。
それでも、大病院の混雑はなくなりません。
やはり沢山の人が大病院へ向かいます。
それはなぜか?
まだまだ理由があるんです。
次回に続く。
同じシリーズの記事
コメントを残す